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慶応OB会

 土曜日、慶應義塾大学法学部の川口實先生のゼミOB会に、卒業以来初めて出席してきた。
 80歳を過ぎた先生は大変お元気で、私と顔を合わせるや「あの、アフリカの話はいつ書くんだ」とおっしゃる。学生の頃から作家志望だった私は、たしかに、アフリカを舞台にしたとある小説を書きたいと(内容は内緒です)お話していたのであるが、あれから30年近くも経ってなお、そのことを覚えていらっしゃるのだから、その記憶力たるや、驚きを通り越して唖然呆然の次元である。
 私もその小説のことをひとときも忘れたことはなく、むしろずっと温めてきたという思いがあるから、先生から思いがけず力強い励ましをいただいた気分になった。
 そのOB会、開会の挨拶の後、先生のお言葉は約50分。話はあちらへ飛び、こちらへ飛び、思いつくまま気の向くまま、インテリジェンスとウィットを交えて縦横無尽に展開していき、乾杯の音頭は開会から一時間が経過した頃であった。それにしても、法律家として毅然としたオーラを放つそのお姿は、「さすが我が師匠!」、と心の中で拍手したくなるぐらい輝いていた。
 ちなみに、川口先生は労働法の権威である。拙著、『幡ヶ谷行き迷宮バス』や、「別冊文藝春秋」での新連載をスタートさせたばかりの『ブラックバード』で組合活動について書くとき、やはり先生の薫陶は小説の血となり肉となって小説に生きている。
 拙著を持参してご挨拶申し上げたとき、先生からは「君の小説は全部読んでいる」といわれ、私は思わず息をのんだ。まさか、私の書く小説など先生が読まれるとは思ってもみなかったからである。しかも「『鉄の骨』はいま5刷か」と(実は6刷です)、増刷回数までチェックされていることも判明! 先生に読まれているとなると、緊張するなあ・・・。

 
 

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