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祖母の死

 祖母が亡くなった。
 94歳。
 1月5日に倒れ、そのまま病院に運び込まれた。そのときには大事には至らず、一週間ぐらい様子を見て退院しましょう、ということになったのに、数日後に脳梗塞、そして肺炎を併発。
 それまで自分で歩き、普通に生活できるぐらい元気だった祖母が、言葉が話せなくなり、栄養は鼻からチューブで採らなければならない寝たきりの生活に。気の毒だった。お見舞いにいって話しかけても、言葉は出てこない。最後に行ったときには眠っていて、声をかけることすらできなかった。
 それから小康状態になり、入院生活は一ヶ月半に。病院から、これ以上の治療はできないから、そろそろ転院を検討して欲しいといわれ、さてどうしようかと考えていた矢先だった。

 高校時代、自宅から学校まで遠かったので、ぼくは祖父母の家に下宿をしていた。
 その三年間、祖母は、ぼくのために毎日朝ご飯を作ってくれ、欠かさずお弁当を持たせてくれた。嫌な顔はひとつも見せず、ぼくのためにひたすら愛情を注いでくれたのだ。
 無事に大学に入り、ここまで来られたのは、祖母のおかげだ。
 作家になってから祖母と会うと、「役場になにかいい仕事はないか」、とよく言われた。祖母にしてみれば、作家なんてロクな仕事じゃない。あんなに苦労してお弁当作ったのは、作家にするためじゃないと思っていたかも知れない。

 祖母が、ぼくの仕事をどれだけ理解していたか、わからない。
 だけど、祖母はいつも「オール讀物」を愛読していたから、たまにぼくの短編も読んでいたはずだ。
 感想は聞いたことがない。
 いつでも聞けると思っていたから・・・。
 聞いておけばよかったな。
 94歳の祖母がぼくの小説をどう読んでいたのか。

 葬儀は24日。
 棺の祖母に花を手向け、死に顔を見ていたら、涙が込み上げてきた。実は、あんなに世話になった祖母に、一度も「ありがとう」をいっていない。
 ちょっと照れくさかったから。
 ごめんな、おばあちゃん。
 だけどほんとに――ほんとうに、ありがとう。
 いまさら役場には就職できないけれど、かわりにみんなに喜んでもらえる小説を書きます。

 
 

 

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